相続税申告手続きを解りやすく解説!
相続税申告は、相続人が相続した財産に対して課せられる税金です。
相続人は、相続開始から10か月以内に申告書を提出する必要があります。
以下では、相続税申告の手続きについて解りやすく次の3つのポイントに整理して解説します。
ステップ1 相続の事前調査
①相続人の調査・確定
相続人を確定するために、故人及び相続人ら全員の出生から死亡・現在に至るまでの戸籍謄本等を請求取得し、相続人の法定相続人を特定します。
②遺産の調査
故人の財産を把握するために、遺産調査を行います。
相続財産は、故人の名義で登録されているに限らず、個人が実質的に所有者であった不動産、預貯金、有価証券など、あらゆる財産が評価対象となります。
特に預金からの出金は、後の相続税調査でも特に問題となりやすいため、過去5年分は全ての金融機関の取引履歴を確認し、引き出された現金の使途・贈与関係等を事前に把握し、整理することが重要となります。
③みなし相続財産の調査
民法上、相続や遺贈で取得したものではないけれど、相続税法では相続財産として扱うものがございます。
それが「みなし相続財産」です。
みなし相続財産とは、相続税法上、相続や遺贈によって取得した財産とみなされるものです。
(例)
・死亡を基因とする生命保険金(以下「死亡保険金」)
・亡くなった人が生前に勤めていた会社から支払われる退職金(以下「死亡退職金」)
・生命保険契約に関する権利
・定期金(個人年金保険など)に関する権利
・特別縁故者への相続財産の分与
・特別寄与者が支払いを受ける特別寄与料
・遺言による低額譲受
・遺言による債務免除益
ステップ2 遺産の相続、相続人らの承継手続き
①遺言書の有無の確認
故人の意思による指定相続が優先されるため、遺産分割協議を行う前に、遺言書の有無を確認します。
もし、遺言書を見つけても、その場ですぐには開けないでください。遺言には自筆証書遺言や公正証書遺言などがあり、その取扱いは異なります。
自筆証書遺言として残されていた場合、すぐに開封せずにそのまま管轄の家庭裁判所で検認手続きを済ませることになります。
公正証書遺言の場合は自筆証書遺言のような検認手続きが不要ですので、内容を確認します。
なお、もし仮に遺言書があったとしても、相続人全員による合意があれば、遺産分割協議による相続を行うことも可能ですので、熟慮の上、検討してください。
②相続放棄手続きの意思確認
相続放棄は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、亡くなった方の住所地の家庭裁判所に「相続放棄申述書」の提出が必要です。
相続が発生してから提出までの期間が短いため、先に意思確認を行うことが必要となります。
③相続財産の評価
相続税申告のために、原則として国税庁財産評価基本通達に基づいた方法による相続財産の評価を行います。
相続財産の評価には、土地や建物の評価額、有価証券の時価、預貯金の残高などを算出する必要があります。
特に土地の評価はとても重要で、評価する人間の知識経験や視点の差によって、数百万円〜数千万円の差が生じることもございます。
評価方法には、財産の種類によって異なるため、限界事例も熟知した専門家のアドバイスを受けることが重要です。
なお、円滑な遺産分割協議を行うためには、遺産分割協議の前に相続財産の評価を行っておくことがポイントとなります。
④遺産分割協議書の作成
遺言書が作られていなかった場合、ないし、遺言書とは異なる相続をされたい場合は、相続人全員で協議を行い、遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書には、財産の分割方法や、相続人の権利と義務が明記されます。
なお、後で後悔しないためにも、遺産分割協議の段階で、ある程度相続税の仮計算を行いながら、それぞれの税負担額や相続税の特例の適用などを検討しながら、遺産分割協議を進めることが重要です。
余談ですが、税理士としても、皆様のご意見を十分にお聞かせ頂きながら、様々なケースに応じた相続税の税額計算シミュレーションを行うなど、対応力をお見せするとても重要な場面となります。
⑤相続財産の承継・名義変更手続き
遺言書ないし遺産分割協議書に基づき、不動産の相続登記や銀行・証券会社での故人口座の解約・承継手続きを行います。このお手続きには、法的に成立している遺言書ないし遺産分割協議書(相続人全員の署名・捺印、全員の印鑑証明書の添付)などが必要になります。
ご自身で行ったご経験をされた相続人の皆様からは、窓口対応で二度手間となってしまうことも多く、とても複雑で、時間を要する手続きで苦労したとのお話を多く頂いておりました。
3 相続税の申告・納税手続き
①相続税の計算
相続財産の評価額をもとに、相続税の課税対象価額が計算されます。
申告書の作成には、相続人の基本情報、相続財産の詳細などが必要です。また、相続人が複数いる場合は、それぞれの分担割合も計算する必要があります。
また、相続税の計算上、非課税財産措置や小規模宅地等の特例など、各種特例措置がございます。
税務署からの案内によると、特例措置における適用要件の誤りが多いと指摘されておりますので、十分に検討の上、専門税理士のアドバイスを受けることが重要です。
②税務署への相続税の申告書の提出と納税手続き
相続税の申告を行い、税金を納めます。相続税の申告期限は、相続発生日から10か月以内となりますので、期限内に手続きを完了することが重要です。
相続税の納税は、税務署宛に行います。
相続税納付書に必要事項を記入し、税務署ないし税務署指定の金融機関にて納付します。
以上が、相続税申告のポイントのご説明となります。
相続開始から10ヶ月は、長いようであっという間にやって参ります。
円滑なご相続のためにも、早めのご相続調査と落とし所を見据えた遺産分割等の相続手続きを行うことをお勧めいたします。
詳しい内容は、個別のご事情により異なりますので、ご相談がございましたら、ぜひお手持ちの資料をご準備の上、ご連絡ください。